ユニコード変体仮名を選定できた背景

2016-08-18 當山日出夫


文字の規格(JIS規格、ユニコード)を考えるとき、忘れてはならないのは、その時々のコンピュータ技術である。


たぶん、JIS規格(0213)と、今般のユニコード変体仮名の、両方の規格制定に、なんらかの形で関与した経験のある人間というと、私(當山)だけということになるのだろうと、思っている。その意味では、個人的には貴重な体験であったと思う。と同時に、その責任として、JIS規格とユニコード変体仮名の関係について、きちんと考えておかねばならないと思っている。


このとき、思うことは、コンピュータとその周辺技術の発達ということである。今回、ユニコード変体仮名を選ぶことができた背景としては、コンピュータ技術と無縁ではないと感じている。


具体的には、
今昔文字鏡とか、Koinとかの、変体仮名フォントが存在して広く流通していたこと。
・コンピュータの画像処理技術の向上によって、画像データのとりあつかいが容易になったこと。特に、活字のスキャン画像の利活用が簡単にできるようになったこと。
・画像データをふくんだデータベースの構築が容易になったこと。
これらのことがあってと感じている。
また、電子メールの添付ファイルで、変体仮名のスキャン画像を添付ファイルで送信する、このようなことが、容易にできるようになった。


0213の時の、Windowsは、95、あるいは、98、ということになる。それが、今回の変体仮名の企画においては、Windows7以降の機種を使うことになった。これは、あくまでも個人的感想であるが、PCによる画像データの処理ということでは、格段の違いがある。この差は、非常に大きなものがあると感じている。


実際に市販のコンピュータ(Windowsマシン)に実装されたのは、2007年の、Vista以降のことになる。このVistaでは、0213:2004が使われようになって、字体の変更の問題がさらに生じることになった。それ以前の、XPとは、見える文字(漢字)の字体の一部が異なることになった。


そして、いま、ユニコードでは、シフトJISの制限をうけなくなっていること。これが、変体仮名提案にいたった、大きな要因かもしれない。かつて、JISの補助漢字「0212」があったが、実装されることはなかった。第三水準といわれたりしたこともあったように記憶しているが、実際に運用されることはなかった。これは、MS-DOSシフトJISでは、実装できないということに、起因していたと理解している。


コンピュータと文字ということを考えるとき、その時代の、コンピュータ一般の利用方法法や技術的な問題、これが大きく影響しているということを、体験的に実感している。