神と『種の起源』

2009/02/03 當山日出夫

たまたま、今、てもとにある内村鑑三全集(デジタル版・見本)が、第10巻。

その最初にあるのが、「十九世紀に於ける欧米の大著述」。これは、明治35年(1902)年、『学燈』56号に寄稿したもの。

まず、その問いは、

「……諸先生に願ふて教を乞ひし条項は即ち次の如し、(1)文芸 学術 諸科学を通じて十九世紀中の最大著述(以下、略)」

これに対して、内村鑑三は、このようにこたえている。

小生も欧米大家の説に従ひ、十九世紀中の最大著述としてはダーウヰンの「原種論」(Charles Darwin’s Origin of Species)を指す者に御座候、小生は目下主として歴史宗教等の研究に従事致し居る者に御座候得共、然りとて小生が今日尚ほ此著に負ふ所は実に多大なるものに御座候、小生をして天然の観念に意を注がしめし者、亦事物の研究に緻密を主とせざるべからざるを悟らしめし者は実に此書に御座候、小生は今日の学生が何人と雖も或は一年或は二年を消費しても此書を攻読せられんことを望む者に御座候、

これを読んで、おどろかないのが普通か、おどろくのが普通か……少なくとも、今の時代における、リチャード・ドーキンス利己的な遺伝子』などの一連の著作を見ていると、どうも「神」と「自然科学」は、親和性が良くないような印象をもってしまう。

これをもってしても、内村鑑三という人が、並大抵の人物ではないことが分かる。ところで、デジタルテキストは、その思想研究にいかに資することが可能であろうか。

當山日出夫(とうやまひでお)