私の送ったパブリックコメント

2009/04/17 當山日出夫

「新常用漢字表(仮称)」のパブリックコメント、私が送信したものの一部を記します。


(1)情報の開示


今回の「新常用漢字表(仮称)」が、大量の漢字調査データに基づくものであることは当然のことです。現在は、コンピュータによる言語研究が発達しており、それは、文字の研究にもおよんでおります。


しかし、インターネットで公開された、委員会の議事録などを拝見しますと、現代の、コンピュータ利用による漢字研究、日本語の表記研究のレベルからはいささかの疑問があります。


漢字だけの頻度調査から、漢字の使用実態や日本語の表記は、わかりません。


1.まず、漢字は、日本語のことばの表記のためにあることを確認したいと思います。


2.そのことばを漢字で書くときに、どのような表記で書くか。漢字で書くか、平仮名で書くか、片仮名で書くか、種々の表記法があります。


3.もし漢字で書くとしても、現行の常用漢字表に準拠して書かれたものと、そうではないものと、資料としては同列にあつかえません。
(a)意図的に現行の常用漢字表で書くために、表外字を仮名で表記した資料。
(b)常用漢字表の範囲をこえて、漢字を使用した資料。
(c)常用漢字表のなかにあっても、仮名で表記した資料。
これらを総合的に判断しなければ、現代の日本語の表記における文字・漢字の使用の実態はわかりません。


4.公開された議事録等によれば、審議の過程で使用された資料は、基本は、単漢字についての調査です。前後の文字をふくむとしても、3字となっています。また、その漢字の使用例が、どのような文献であるかについても、不明です。このような資料では、後から、第三者が、「新常用漢字表(仮称)」の制定の過程について検証することができません。


5.総合的に判断して、今回の「新常用漢字表(仮称)」は、資料とその利用において説得力の欠けるものとなっております。現代のコーパス言語学の視点から、検証にたえるだけの説得力のある資料と調査でなければなりません。


6.そのためには、新しい漢字表の制定後でもかまいませんので、可能な限りの資料の公開が必要と考えます。たとえば、凸版印刷のデータについては、どの本であるのか、書名・作家名などについて、可能な限りのデータの公開を要望します。


これを、国立国語研究所コーパス「ことのは」にゆだねるのではなく、「新常用漢字表(仮称)」制定のためのデータとして公開していただきたい。でなければ、なぜ国語研のコーパスを、基本資料として利用しなかったのか、という問題をまねきます。


以上、「新常用漢字表(仮称)」が、より説得力のあるものとして、一般の人々に受け入れられるためには、現代社会においては、情報の開示(調査に使用したデータについて法的に可能な範囲での公開)が、必須と考えます。また、そのうえで、都道府県名漢字など、個別の判断がなされるべきと考える次第です。


制定の基本となった調査データの開示をともなわない漢字表は、説得力を持たない、現代社会は、そのような時代であるということを理解し配慮をお願いします。


當山日出夫(とうやまひでお)