捺印は不必要になるのか

2009/04/29 當山日出夫

小形さんの「もじのなまえ」。

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20090428


新しいメンバーでどのような議論が展開されるか……おそらくは、字種の増減程度かな、と予想される。字体については、印刷標準字体準拠で行くしかないだろう。

人名地名など固有名詞を排除した漢字表である以上、実際の言語生活における文字使用としては、ダブルスタンダード(あるいは、新常用漢字表・印刷標準字体・その他実際につかう字、のトリプルスタンダード)は、避けられない。これが、実際の日本語の姿である。

この観点にたてば、新常用漢字表(仮称)と印刷標準字体の、字体の整合性など、現実的には、無視できる。運用上の解釈で、きりぬけることは可能である。

ところで、追加してほしいと候補にあがった字のなかで、興味深いのは「捺」の字。頻度としては低いはず。調査対象が、書籍(凸版委冊)や新聞に限っている限り。

しかし、現実の社会での生活ではよく目にする。ハンコを押す=「捺印」。

この字(捺)が無いのはいいとしても、来年には決まるであろう「新常用漢字表(仮称)」の決定案について、だれが、「捺印」することになるのであろうか。その責任者は、「捺印」が「新常用漢字表」で書けないことを覚悟して、印鑑の捺印をおこなうことになる。

それとも、もう、文化庁文部科学省では、行政文書に印鑑は不要になってしまっているのか。そうであるならば、まことに慶賀にたえない。

當山日出夫(とうやまひでお)