「しょうがい」をめぐる議論

2009/05/14 當山日出夫

まさに、危惧していた議論になっている。「しょうがい」を「障害」「障碍」と書くかどうか、である。いや、その前に、この語が日本語では、いつからどのように使われるようになったのか、そして、現状ではどうであるのか。

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20090514/p1

再掲載になるが、私の送ったパブリックコメント、部分的に再引用する。

http://d.hatena.ne.jp/YAMAMOMO/20090417/1239957129

漢字だけの頻度調査から、漢字の使用実態や日本語の表記は、わかりません。

1.まず、漢字は、日本語のことばの表記のためにあることを確認したいと思います。

2.そのことばを漢字で書くときに、どのような表記で書くか。漢字で書くか、平仮名で書くか、片仮名で書くか、種々の表記法があります。

3.もし漢字で書くとしても、現行の常用漢字表に準拠して書かれたものと、そうではないものと、資料としては同列にあつかえません。

(a)意図的に現行の常用漢字表で書くために、表外字を仮名で表記した資料。

(b)常用漢字表の範囲をこえて、漢字を使用した資料。

(c)常用漢字表のなかにあっても、仮名で表記した資料。

これらを総合的に判断しなければ、現代の日本語の表記における文字・漢字の使用の実態はわかりません。

私が送ったのは、以上のようである。しかし、もう一つまえの段階の検証が必要。

・その語を日本語でつかうかどうか。

ということ。このあたりは、近刊予定の『論集文字』(勉誠出版)に書いておいた。(ここまでさかのぼった議論は、当面する「新常用漢字表(仮称)」のパブリックコメントにふさわしくないと思って、送信した最終版では削除した。)

たしかに、社会の中に、「しょうがいしゃ」は存在するであろう。今も、昔も。だが、それを、社会として、どのように認識するかは、時代によって異なる。「しょうがいしゃ」というカテゴリで認識するか、別のカテゴリで認識するか(しないか)。そして、そのうえで、「しょうがいしゃ」を、どう表記するか。

あるいは、逆に考えるならば、「障害者・障碍者」という「ことば」があるから、社会のなかに「障害者・障碍者」が存在する。ことばがものをあらしめる(鈴木孝夫)。

ことばについての研究として、当然の手続きをふまえるべき、ただ、このことにつきる。

論点を整理すると、(やや、極論になるが)、
・「障害者・障碍者」「しょうがいしゃ」という「ことば」が「障害者・障碍者」を生み出す。
・このことと「広場のことば」としての、「新常用漢字表
これを、どう考えるかだと思う。

いわゆる「差別用語」のように、その語を使わないからといって、社会から、その現象が消えるわけではない。「新常用漢字表」にそこのところまで求めるべきではないであろう。

當山日出夫(とうやまひでお)