新常用漢字:読める字、書ける字、分かる字
2009/03/25 當山日出夫
新聞協会の意見を読んで、すこし。
字種の追加、削除案については、何をどうサンプルとして調査したか、その対象と方法にかかわる。この点については、「漢字だけの調査では漢字のことがわからない」という意味のことを、以前に書いた。
漢字だけの頻度調査から何が分かるのか
やまもも書斎記 2008年6月25日
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2008/06/25/3594990
これについては、さらに詳しく、別に述べたい。
今回の新聞協会の意見で重要な指摘は、次の部分(少し長いが引用する)
なお、追加候補191字の中には読みの難しいと思われる字がかなり見受けられます。書けなくても読めれば情報機器で打ち出せますから、そのような字種の採用には同意できます。しかし、読めないものは情報機器でも出せません。「新常用漢字表」試案の「基本的な考え方1(2)」には《情報機器は「読む行為」よりも「書く行為」を支援する役割が大きい。(中略)その意味で、情報化社会においては、これまで以上に「読み手」に配慮した「書き手」になるという注意深さが求められる》とあり、また文化審議会45回総会に報告された「国語分科会漢字小委員会における審議について」では《基本的に、(常用漢字は)「①読める」「②分かる」「③書ける」という三つの要素を満たす必要がある》と述べています。新聞・放送としてはこの点を踏まえ、常用漢字は読者・視聴者にとって読めて意味が分かることが重要であると考えています。今回の漢字表見直しのための調査は、出現頻度などの「実態」調査を重視していますが、それと同等に、その漢字を読めるかどうかなどを調べる「理解・認識度」調査も必要です。漢字小委議事録によれば、読めるかどうかの調査を国として行う必要があることが複数の委員から強く要望されています。早急に実施し、理解度の低い字は「一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字」(試案の「基本的な考え方2(1)」)として適当かどうか、再検討するべきではないでしょうか。
簡単に私なりにいうと、新常用漢字表で書いた日本語文は、どれほど、読みやすいものであるのか。あるいは、そのような日本語文を書くことが可能であるか。現在の、ワープロの通常の操作で可能かどうか。
まずは、このあたりの、基礎的な調査を実施すべきということになる。
野村さんは、朝日新聞(2009年3月18日)で、こう書いている。
「摯」「羨」「踪」「聘」「慄」など社会生活ではあまり目にしないようなものも含まれている。
ちなみに、上記の引用を入力するとき、「真摯」「羨望「失踪」「招聘」「戦慄」の、熟語で入力して、一字を消した。
調査する場合、単漢字についての理解度についてか、あるいは、その字をふくむ熟語に拡大するのか、新常用漢字の根本にたちかえって議論をすべきだろう。いわゆる「交ぜ書き」の問題を再検討する必要がある。
當山日出夫(とうやまひでお)