朝日新聞「新常用漢字表をよむ」をよむ

2009/03/31 當山日出夫

2009/03/31の朝日新聞、朝刊(大阪版)に、白石明彦編集委員の「新常用漢字表をよむ」として、先日(26日)の、「新常用漢字表(試案)」の説明会の様子がレポートされている。

記事の中心は、字体の整合性。特に、「しんにゅう」の「てん」が一つであるか二つであるかの問題。「遡」「謎」「遜」。(※ATOK2009では、「けんそん」から変換すると「謙そん」の表記が出る。)

すでに述べたことであるが、確認すると、

・「新常用漢字表(仮称)」の内部での字体の整合性を優先するか。

・実際にコンピュータで使用の文字に合わせるか。これは、印刷標準字体を決めて、それをうけて、0213の2004年改訂があった。タテマエとしては、国語政策の一貫性ということになる。

実は、この問題は、表外漢字(印刷標準字体)とワンセットで論じなければならないはずである。現実に、現行の常用漢字でも、200字ほど増加の新常用漢字(仮称)でも、通常の日本語が書けない。

現に、新聞記事を見れば、「辻」の字。朝日新聞の文章は「一点」、写真の「阿辻哲次」の「辻」は「二点」。一つの記事のなかで、新聞記事の文字と、漢字小委員会のメンバーの名称の写真とでは、字体がちがっている。このような現実が、堂々とまかりとおっている。まず、この現実をふまえるべきだろう。

それから、使用頻度の問題。これは、調査として無意味。一点の「しんにゅう」は、拡張新字体になる。康煕字典体の二点の「しんにゅう」を、いわゆる正字体とするならば。印刷会社(凸版印刷)が、意図的にクライアントの要求として、拡張新字体にしないかぎり、通常の印刷物では、「常用漢字体」+「康煕字典体」が、通常の文字の使用である。(このことについては、別に考えてみたい。)

また、記事では、新聞協会の意見も紹介されている。ただ、これが、すべての新聞社の意見というわけではない。日本新聞協会は、字体の混在を認めない方針。「しんにゅう」は一点に統一。しかし、

もじのなまえ
http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20090325

このコメントに、Taroさんが、南日本新聞、山陽中央新報、が、字体の混在を容認する趣旨の記事を載せている。参照の価値がある。

當山日出夫(とうやまひでお)