書体・字体・字形

2016-07-28 當山日出夫


学会発表というのは、公開の場であると思うので、そこでの発表資料(レジュメ)から引用するのは、許容の範囲と思う。以下、発表資料からの引用である。


今年(2016)年5月22日の、第114回訓点語学会での発表。
階層構造としての仮名字体 石塚晴通


漢字の書体・字体・字形、字種の定義、として次のようにある。


書体:漢字の形に於て存在する社会共通の様式。多くは其の漢字資料の目的により決まる。楷書・草書等


字体:書体内に於て存在する一々の漢字の社会共通の基準


字形:字体内に於て認識する一々の漢字の書写(印字)された形そのもの

(石塚晴通『図書寮本 日本書紀 研究編』1984


字種:社会通念上同一のものと認識され、一般的に音韻と意味が共通する相互交換可能な漢字字体の総合

(HNG運用にあたり便宜 2005)


とある。そのうえで、岩崎本日本書紀の事例をしめす。そして、次のようにある。


其の上位階層として、一つには省画仮名(省画口訣)・草体仮名(草体口訣)・増画字喃等は総て漢字から出自しているので、これ等を書体としてとらえる見方が成り立つ。つまり


書体:漢字から派生した文字の形に於て存在する社会共通の様式。多くは其の文字資料の目的により決まる。省画仮名(省画口訣)・草体仮名(草体口訣)・増画字喃等。


字体:書体内に於て存在する一々の文字の社会共通の基準


字形:字体内に於て認識する一々の文字の書写(印字)された形そのもの


このような定義は、漢字については、同意できることである。だが、仮名についてはどうであろうか。仮名といっても、真仮名(万葉仮名)・平仮名・片仮名がある。このうち真仮名は基本的に漢字をつかったものであるから、問題はないだろう。のこる平仮名・片仮名について、その書体を論ずることは、どのようにして可能であろうか。そして、それは、変体仮名の議論にどのようにかかわっていくのであろうか。


このようなことから、つづけて考えてみたい。


なお、引用にあたり、このブログのレイアウトの体裁にあわせて、インデント等をあらためた箇所がある。