草仮名の書体

2016-08-01 當山日出夫


昨日は、仮名の書体ということを考えてみた。このとき、平仮名と片仮名を例にだした。だが、仮名はこれだけではない。他に、真仮名、草仮名がある。では、真仮名、草仮名の書体はどのように考えるべきであろうか。


真仮名については、問題ない。ここでは、いわゆる万葉仮名の意味でつかっておくことにする。漢字一字一音の表記である。(このところ、厳密な議論をしようと思うならば、「万葉仮名」「真仮名」について厳密な意味用法の定義が必要になることは、承知しておくとしてであるが。)


ともあれ、真仮名については、基本的にその文字の形が漢字と同じであるので、漢字に準じてあつかうことができる。楷書体の真仮名がある、行書体の真仮名がある、といってもいいだろう。


これが、草書体になるとどうか。ここで、草仮名の問題にいきあたる。


一般的に定義するならば、草書体の真仮名、ということができようか。平仮名のように漢字から独立した形にはなっていない。文字の形としては、漢字の草書体を使用しているもの、このように認識することができる。


いいかえると、草仮名はまだ漢字なのである。漢字を草書体で書いている、それが草仮名であるといえる。この意味では、草仮名という書体を漢字に連続するものとして認定することに問題はない。階層構造として、書体・字体・字形と設定したときに、書体のひとつとして、草仮名をふくめることに問題はない。


ところで、草仮名がつかわれた文献資料としては何があるか。まず、思い浮かぶのは(日本語史・国語史というような分野の人間としてはであるが)、『秋萩帖』である。そして、今般の変体仮名ユニコード提案においても、『秋萩帖』は大きな役割をはたしている。『秋萩帖』については、改めて考えてみたい。