JIS規格の平仮名と片仮名

2016-08-15 當山日出夫


これまで見てきたところによると、どうもJIS規格においては、平仮名と片仮名は、整合性という点で、問題を残しているように思える。意図的にそのようにしたというのではないであろうが、結果的にはそうなっている。


0208において、片仮名のみに、「ヴ、ヵ、ヶ」があり、それに対応する平仮名はなかった。


それが、0213になって、対応する平仮名「ゔ、ゕ、ゖ」が追加になった。と同時に、外来語表記用に、「ヷ、ヸ、ヹ、ヺ」が追加になっているが、それに対応する平仮名は、0213にははいっていない。


またアイヌ語用には、片仮名が追加になっているのであって、それに対応する平仮名はない。(これは、その用途を考えればなっとくできることではあるが。)


結果的に、平仮名・片仮名が、別系統の文字として、平行して存在することになっている。同じ文字列を、平仮名でも片仮名でも、同じように書けるということはない。片仮名専用文字というものを持つことになっている。


ここで、次のような疑問が生じることになる。日本語の表記において、平仮名と片仮名は別の系統に属する別々の文字であるのか、あるいは、同じ音(あるいは、同じ語)を表しうる種類は違うが基本的に同じ文字、ということになるのであろうか。


これは、おそらく日本語の表記史の流れの中で、平仮名と片仮名の関係をどのように位置づけるかで、考え方が変わってくるところの問題であると思う。ここで、私は結論を出そうというのではない。しかし、JIS規格の文字(平仮名・片仮名)を見るときに、日本語の表記史からの視点というものが、あってもよいと思うのである。


JIS規格を見ている限り、平仮名・片仮名において、整合性をたもとうとするベクトルと、その用途に応じて必要とされる(使用される)文字は異なるのであるとするベクトルと、二つの方向性が、同時に観察されるように思える。


なぜこんなことを考えてみるかというと、JIS規格は、何をきめたものなのか。そして、ユニコードは何をきめたものなのか。それは、どのように運用可能なものなのか、という点に論点がおよぶと思うからである。


ユニコードの運用という観点にたって見るならば、濁点つきの平仮名「わゐゑを」もありうることになる。現実の問題としては、ワープロ編集画面で、使用することはできる。あるいは、将来的には、濁点つき、半濁点つきの変体仮名もありうる、その可能性を否定できない。


また、半濁点つきの「かきくけこ」「カキクケコ」(ガ行鼻濁音)は、ユニコードにははいっていない。これは、合成でしめすことになっている。


では、JIS規格で文字が決まっていることの意味とは何なのであろうか。