変体仮名が必要とされる理由

2016-08-16 當山日出夫


0208の仮名から、0213で増えて、さらに、こんどユニコード変体仮名がふえようとしている。その理由を確認しておきたい。


私なりに整理すると次のようになるだろう。
(1)
学術利用
・仮名字体史研究
・古文書や古記録などの翻刻
(2)
行政利用
・戸籍事務


このうち私のかかわったのは、(1)の学術利用についてである。学術(日本語学、日本文学、日本史学、古文書学など)の分野での、変体仮名の需要はたしかにある。


ここで確認しておきたいことは、主に日本文学などの分野で変体仮名で、テキストを翻刻することを目的としたものではない、ということである。また、一般の商業的な利用も念頭にはおいていない。


まず、翻刻であるが……「翻刻」というのをどう定義するかにもよるが、基本的には、昔の崩し字、変体仮名などを、現代の通行の文字(漢字、仮名)におきかえて、読みやすいテキストをつくること、ととりあえず考えてみる。このとき、変体仮名は不必要である。変体仮名で書かれているものを、現代の普通の仮名に書き直すことが翻刻の仕事なのであって、変体仮名のまま翻刻したのでは、変体仮名を知っている人しか読めないテキストになってしまう。これは、通常、翻刻とはいわないだろう。


そうではなく、昔の書物や古文書などに、どのような変体仮名がつかわれていたか、日本語学の研究分野において、文字史・表記史からの研究がある。このような研究分野においては、変体仮名フォントは、必要なものになってくる。そして、今般の変体仮名ユニコード提案においても、これまでの文字史・表記史の研究論文については、チェックをかけている。その論文が書けるようになるかどうかは調査して文字を選んでいる。


だが、ともあれ、変体仮名が将来ユニコードで使用可能になったとして、そこで次のことが改めて問われることになるだろう……それは、仮名の字体とはなんであるのか、それ文字コードをあたえるということは、文字の何に対して、どのような認識のもとに、コード化していることなのか。


そして、それは、先にのべた草仮名をどのように認識するか、と関連してくるはずである。